ラブレ菌で話題 大安のお漬物『すぐき』

●『すぐき』を介し、発酵食品をご紹介することで発酵食品を取り入れた食生活をご提案します。
●ラブレ菌が免疫力向上に貢献する理由を探ります。
●『すぐき』が、ご自宅用はもちろんのこと、贈答好適品であることを歴史から紐解きます。
●他の方に『すぐき』や『ラブレ菌』について十二分に語れる情報を提供します。
●『すぐき 』の召し上がり方の提案をしております。
発酵食品に注目
微生物とは、ラブレ菌と呼ばれている植物性乳酸菌はもちろんのこと、麹菌、酵母など小さな生き物たち。微生物が食物の栄養を食べて微生物にとって必要なエネルギーをつくります。この時、食物の性質が変わります。食物が腐ってしまった場合を腐敗と呼びます。私たちにとっていい働きをしてくれた場合を発酵とよんでいます。例えば、おいしくなったり、栄養価が高くなったり、日持ちがよくなったりします。サビない身体づくりで話題の抗酸化作用や腸内環境の改善と、うれしいことも。
発酵食品の仲間
発酵食品 漬け物(『すぐき』・奈良漬・ぬか漬け)、納豆、鰹節(本鰹節)、塩辛、舞昆など。
発酵飲料 ビール、日本酒、ワイン、甘酒、紅茶、烏龍茶、プーアル茶、黒酢、カルピス、焼酎など。
発酵調味料 味噌、醤油、本みりん、塩麹、ニョクマム、コチュジャン、ナンプラー、スンバラなど。
デザート ヨーグルト、葛餅、ナタデココなど。
郷土料理 ひぶりがっこ しょっつる(秋田)、へしこ(福井)、くさや(東京・伊豆諸島)など。
海外から日本へ パン、チーズ、キムチ、バルサミコ酢、アンチョビ、ピクルス、ウイスキーなど。
発酵食品を食卓に
【豆類 】納豆、醤油、味噌、豆板醤、コチュジャン、スンバラ など。
【魚介類】鰹節(本枯節)、塩辛、くさや、魚醤、アンチョビ、ニョクマム、ナンプラー
しょっつる、へしこ、くさや など。
【肉類】生ハム、サラミ など。
【乳製品】チーズ、ヨーグルト、サワークリーム、カルピス など。
【野菜・果物】すぐき、奈良漬、ぬか漬け、キムチ、ピクルス、ワイン、ひぶりがっこ
バルサミコ酢、ピクルス など。
【穀類】塩麹、甘酒、米酢、黒酢、日本酒、甘酒、本みりん、ビール、焼酎、ウイスキー 葛餅、
ナタデココ パン など。
【その他】チョコレート、コーヒー、紅茶、ウーロン、お茶、、烏龍茶、プーアル茶、舞昆 など。
微生物からみる発酵食品
【麹 菌】糸状菌(しじょうきん)という微生物で単細胞性のもの。一般的にカビと呼ばれています。
味噌、醤油、みりん、米酢、甘酒、日本酒、焼酎、漬け物、などに用いられています。
【酵母菌】パン ビール ワイン(イースト、天然酵母)カルピス(カルピス菌)
日本酒、紅茶、味噌、醤油、漬物、かつお節、塩辛、くさや、納豆、などに用いられます。
【乳酸菌】(ラブレ菌、ビフィズス菌、ガセリ菌、ブルガリクス菌、シロタ菌、カルピス菌)
【納豆菌】枯草菌(こそうきん)
【酢酸菌】(ナタ菌(ナタデココ))
純米酢、麦芽酢(モルトビネガー)、(玄米)黒酢、ぶどう酢(ワインビネガー)
りんご酢、が作られています。
麹菌と酵母の共同作業
日本酒の原料は、蒸した米と米麹、水が原料。アルコール発酵をさせたいのですが、ひとつ問題があります。酵母菌が糖をアルコールに変化させてくれますが、肝心の糖が米には含まれていません。そこで、麹菌の出番です。増殖する際に生産される酵素のひとつアミラーゼ。デンプンを糖に変える『糖化』を行ってくれます。日本酒は『糖化』と『アルコール発酵』を同時に行うため並行複発行と呼ばれています。なお、酵素はデンプンやタンパク質を細かく切るハサミのようなもの。タンパク質の一種で生き物ではありません。
気になる免疫力向上とは
『京都の男性の寿命が全国2位』当時の新聞記事をみた故岸田綱太郎医学博士。京都でよく食べられている漬物に着目しました。さまざまな漬け物から乳酸菌を採取。博士は、研究を重ね1993年すぐき から植物性乳酸菌であるラブレ菌を取り出すことに成功しました。胃の胃液、特に、十二指腸の胆汁に高い耐性をもつラブレ菌は生きて腸まで届くとも。お腹の調子が整えること以外にも免疫力の向上に着目しました。がんや肝炎の治療薬として知られるインターフェロン。体内でウイルスやガン細胞などの異物に反応して作られ感染から守ってくれます。ラブレ菌はインターフェロンの一種であるインターフェロン αを生み出す力を促進。ウイルスやガン細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化します。これが免疫力がアップするといわれている理由のようです。魅力的な力を秘めるラブレ菌の研究は現在も続けられています。
400年前から贈答好適品
公家が『夏の珍味』として大切に味わう。桃山時代、上賀茂神社に仕える社家(しゃけ)が京都御所から種子を賜る。皇居に仕える上流階級である公家(くげ)【貴族・公卿(くぎょう)】への贈り物として屋敷の庭で栽培を始めました。当時は自然の気温に任せて発酵させる『時候熟れ』が行われていました。現代なら毎年11月から12月初旬頃に初物が漬け上がる。いわゆる『新漬け』と呼ばれるもの。みずみずしくまろやかな酸味と独特の香りが絶品とのこと。対して、『時候熟れ』は自然の気温に任せて発酵させるため漬け上がりは春から夏。故に、『夏の珍味』と呼ばれていたのでしょう。現在は年末年始の贈答品として親しまれています。現代でも『時候熟れすぐき』を販売する店舗も。酸味が効いたすぐきが好きな方には、これまた、絶品とのこと。価格が高いというイメージがあるからこそ贈答品に最適であり、よろこばれます。
マインドフルネス
タレント 所ジョージさん曰く『食事には事が入っている』とのこと。彼が言うには、ただモノを食べるのであれば『食』であり、準備『事(こと)』が入れば『食事』になるという。続けて、「沖縄の人が豚肉を食べるから健康である」というが、実は、『沖縄に住まうおじいさんは朝から食器を並べておかずを盛り付けて召し上がる』という『事(こと)』が入っているから健康なんだ、と。本記事もそれに習い『大安のすぐき』を理解するという『事(こと)』を行い、これから食べるものは体にいいと体に促して食す“マインドフルネス”を行うことでスペックに書かれたような恩恵とは別の豊さが手にできるのではないだろうか、と、提案します。
本題へ。
自然から生み出されたやさしい酸味、噛めば噛むほどに口の中に広がる特有の風味。すぐきから分離されたラブレ菌はサプリメントや飲料に配合され市場に多く出回っています。当然のことながらラブレ菌自体ですので『すぐき』の面影はありません。『すぐき』とラブレ菌が出会って醸し出す味わい。つけ上がってからも進む発酵。味わいや健康だけではなく、彼らが織りなすストーリーのおもしろさも、ぜひ、一緒に味わって見てください。食卓が一段と盛り上がることでしょう。
すぐき
京都の三大つけもの(千枚漬 すぐき しば漬)のひとつ『すぐき』についてご紹介。
すぐきは、京都上賀茂の特産品。独特の風味と酸味をご賞味くださいませ。
『すぐき』を細かく刻んで『すぐき』チャーハンに。さっぱりとしたお味が夏にうれしい一品です。

『すぐき』とは
歴史
『年を経て酸味を生ずるので酸茎(すぐき)と称す』とは江戸時代は元禄の頃に出版された『本朝食鑑』に記されていた言葉。酸茎菜(すぐきな)は桃山時代に上賀茂神社に伝える社家(しゃけ)(神社を奉祀する世襲神職の家柄であるという当時の身分)が京都御所からタネを賜りました。屋敷の庭で上層階級の贈答用として栽培されていました。種も製法も永きにわたり門外不出とされてきました。酸茎菜(すぐきな)の別名が『御所菜』や『屋敷菜』と呼ばれる所以でもあります。製法の公開は約300年ほど前。ある飢餓の年、難民救済のため上賀茂の農家に公開されました。現在も上賀茂の農家で栽培されています。
酸茎菜(すぐきな)を守る
酸茎菜(すぐきな)の純粋なタネを守るため自家採取の手間を惜しみません。アブラナ科である酸茎菜(すぐきな)。同じアブラナ科である菜の花との交配が恐れられています。現在、酸茎菜(すぐきな)の栽培地周辺に菜の花を植えてはいけない格別な配慮がなされています。
製法
丹精(たんせい)を込めて作ります。
収穫
初冬になると酸茎菜(すぐきな)を収穫し水洗いをします。
面取り
汚れた葉やひげ根を取り、面取り包丁で面取りをします。
荒漬け
水の張られた大きな樽に酸茎菜(すぐきな)を入れます。十分に塩を振り重石をして一晩荒漬けにします。しっかり塩を浸透させます。
本漬け
水洗いをし塩を振ったら四斗樽(しとだる)の中へ。一番下に蕪(かぶ)の葉を敷いて蕪(かぶ)の部分が内側になるように。さらに、蕪(かぶ)同士が触れないように、蕪(かぶ)を葉で包むようにして、渦巻状に並べます。塩を均等に振って一段目が終わります。この作業を繰り返し、樽から盛り上がるように重ね上げて、最後に、天秤押しでじっくり漬け込みます。
天秤押し
天秤押しは、上賀茂、冬の風物詩。樽のフタに咲く鮮やかな塩の華とともに絵になります。『本漬け』を行うときに使われる手法は昭和初期に考案されたもの。長さ3〜4メートルの丸太の先に30キロの重石をくくりつけます。テコの原理を用いて圧力をかけるためフタには約300キロにもなる圧力をかけることができます。先人たちの知恵が令和の時代にも息づいています。

(写真提供:京都府漬物協同組合)
追い漬け
時間の経過とともに『すぐき』から水分が抜け約半分ほどになります。抜けて上がってきた水は都度取り除き嵩(かさ)が減った分の『すぐき』を漬けます。この作業は3日から4日ほど続けられます。
室入れ
すぐきの発酵を人工的に促すための部屋、“室”。約一週間、40℃に保たれ“室”に入れ乳酸菌を発酵をさせます。植物性乳酸菌が糖を食べ分解することで乳酸などを作ります。独特の酸味のある味わいに。“室”から出して5日から6日ほど寝かせて商品になります。
味の決め手
“室”は、周囲はレンガで囲まれ中は畳やしろで覆われています。大正の半ばまでは自然発酵でしたので食べごろは葵祭の頃でした。今は、木炭や電気を使って40℃に保たれ発酵時間が短縮されました。それぞれの“室”や樽には家ごとに違う乳酸菌が住んでいますので『すぐき』の味も家ごとに違います。
ラブレ菌
ラブレ菌(ラクトバチルス・ブレビス)という植物性乳酸菌は1993年に(財)ルイ・パストゥール医学研究センターの岸田綱太郎博士(1920年- 2006年)によって発見されました。ラブレ菌は、乳酸や塩分の強い環境で生活するため生命力が強い乳酸菌と言われています。ご存知の通り、ラブレ菌は一般食品やサプリメントとして販売されています。ラブレ菌を取り出さなくとも『すぐき』を食べればラブレ菌を摂ることができます。チャーハンやラーメンなど新しいメニューを考えるのも楽しいものです。
大安のすぐき

おみやげ袋

出典
